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擬人化パラレル文です
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「この人はね、自分から移動を嘆願したんだよ」

俺に視線を向けていた秋が再び夏に視線を戻した
その瞳はやっぱり冷たくて、見つめられてる夏が可哀想になってくる
でも俺には二人の事情ってもんが分からないからどうにも出来なくて...
じっと黙ってると夏が決心したように口を開いた

「確かに...あの時は俺のワガママで移動を申し出た。でも却下されたんだ」
「じゃあなんでアナタはココにいないの?」

秋の声は聞いてるだけで冷え切るような冷たさで...俺と夏の心を凍らせた

「じゃあなんであの人がココから出て行こうとしたの?」

さっきとは違って泣きそうな声になった秋の肩が少し震えている
泣いてるのかな?
覗いていいものか分からず俺はその場から動けなかった
秋の顔を正面から見ていた夏が俯きながらため息を吐いた

「...違うんだ、アイツはオレがここを出て行かなくなったから...」
「おかしいでしょ?アナタが残るからあの人が出てくなんて...そんな理由ドコに!」
「そんなの知らねぇよ!でもだから俺が出て行くことになったんだろ!」

苦虫を噛み潰したような顔でそう言った夏が俺の居る上の方を見上げた
俺も同じように見上げてみたけどそこには何もない
何もないはずなのに…じっと同じ場所を見つめる夏には何かが見えているんだろうか?
夏は空に手を翳すとその指先をじっと見た

「カオル...コレはオレがトモオミから聞いたんだけど」
「今のアナタにそれはムリでしょ?」

夏が話す言葉を遮るように秋が途中で口を挟んだ
その秋の行動に夏が苦笑を浮かべる
なんだかさっきから秋はおかしい...冬のことが関係してるからか、すごく不安定な気がした

「いいから聞けって、アイツがここからの異動願を出したらしい」
「はっ...アナタじゃあるまいし」

秋は夏に対して軽蔑したように笑ったけどその顔は逆に色が悪くなっていく
俺は秋が倒れてしまうんじゃないかと思って、もしそうなったときに支えられるように後ろに移動した
本当に倒れることはなかったけど、秋は俺の方を向いてありがとうと小さく笑った

「本当だ...俺はその理由を聞くためにここに来たんだ...トモオミが来るって言ってたけどそれじゃ遅いからって。俺に行って来いってアイツが...」
「で、アナタはあの家に入れないから、それを俺に聞けって言うの?」

秋の言葉に驚いて俺は夏の方に視線を向けた
その顔は苦渋に満ちていて...夏は何も言わずに首だけを縦に振った

「嫌だよ...そんなの...あの人が自分から言ってくれるんだったらわかるけど...俺はあの人から聞くまでそんなの信じない」
「信じる信じないはおまえの勝手だけどな...そんなこと言ってると来年戻ってきたら確実にここには違う冬が来るはずだ...しかも」
「しかも?」

夏の顔が急に強張って苦虫を噛み潰したような険しい表情になった
そのまま秋と俺を見ると俯いて右手を握り締める
その手は力を入れすぎて真っ白になっていた
夏が何を言い出すのか秋と俺が固唾を呑んで待っていると夏は意を決したようにゆっくりと顔をあげた

「冬はもう返ってこない」

固い口調でそう言いながら秋に視線を移すと秋の唇が震えていた
何かを口にしようとしているのに上手く話せない...そんな感じに見えた


「冬は春も夏も秋もいらない...冬の国に行くんだ」


夏は忌々しそうに言うと秋から俺に視線を移してこう言った


「今年でアイツは俺たちの手が届かない場所に行っちゃうんだ...」


夏の瞳から光る何かが零れたように見えた

 

END

アトガキ*またまた続き
いよいよもうすぐクライマックス!
まだ先ですが最後3話はブログから夢機能付きへ移動しますv

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夏と秋が俺の前を並んで歩いてく

何分か前までは秋の所へ案内してくれと夏に言われて気配を辿って歩いていた
歩く最中名前の話になって顔色が変わった夏とその顔を見て何かを思い出しそうになった俺が立ち止まっていると肩を誰かに叩かれた
それは俺たちが探してた本人で...秋は俺たちを見るとにっこりと微笑んで手を軽く上げた

「お久しぶりで」
「あぁ...そうだな」

会いたいと言っていたのに夏は目の前にいる秋と目を合わせようとしない
秋はそんな様子の夏の前に手を出すと左右に軽く振った

「アソコに行ったんでしょ?」
「行った」
「会えた?」
「会えるわけねえだろ!」

忌々しそうに顔を歪ませた夏が会ってから初めて秋を見た
夏は秋の顔を見ると小さく悪かったな...と呟いた
何が悪かったのか...分からない俺は口を挟まず二人の話を後ろでただただ聞きながらついて歩く
秋は少し遠い空を見上げるように上を仰ぐと軽く息を吸い込んだ
そして少しだけ困ったような表情を浮かべて夏の方を向き直った

「今更...だよね」
「そうだな」
「もう少し早く...来てたら変わってたかもね」
「あぁ...」

まったく話が見えない
二人の間で成立している会話は俺にしてみればまったく何のことだか分からなかった
俺は何を話しているのか聞くことも出来ずじっと黙って歩いていると前の二人が立ち止まる

「ここで話そうか」

そう言って秋が指差したそこは見たこともない草生い茂る広場だった

「こんなところあったんだ...」

無意識に呟いた俺を二人が一緒に振り返ってくる
二人の顔にはありありと分かるほど驚きの色が浮かんでいた

「はにゃ?どしたの?おふたりさん?」

にへっと笑って首を傾げると秋の顔に苦笑が浮かび夏の顔は困ったように歪んだ

「ツチヤってある意味おりこうさんだね」
「え~~??ナニナニ??ごほうびくれるの~?」
「騙されやすいってあるイミ罪だな...」
「だまされる?汝くいあらためよ~?」
「ク...」
「ハハハハ...」

頭がはてなでいっぱいの俺のことは無視して二人の口から笑いをこらえる声と乾いた笑いが漏れてくる
二人は顔を見合わせるともう一度俺の方を一緒に向きなおした

「ツチヤ、センセから行っちゃダメって言われてる場所あるでしょ?」
「う...うん」
「多分ココそう言われたんじゃない?」
「ううん知っらないよぉ~?」
「知らないわけないだろ?ここはさっき俺がいた家の横にあった空き地だ」
「えぇぇぇぇぇえ~~~?!」

夏の言葉に驚いて俺は辺りを見渡した
周りを見渡してもあの家も桜も見当たらない
俺は分からないとばかりに夏の顔を見ると何が言いたいのか分かったのかその口が動いた

「ココは気の歪みが激しいんだよ」

夏が言ったことは春が前に俺に言ったことと同じだ

「そうそう...だからね、ちょっといじればこんな風に小さな空間に入れるんだ」

でも俺には秋の言うことは良く分からなかった

「ま、内緒話をするにはいい場所ってことだよ」
「内緒話?」
「そ、それをしにわざわざ来たんでしょ?」
「あぁ...ホントは冬に直接言いたかったんだけどな」
「アナタ...あの人に会ってもらえると思ってるの?」

夏の言葉を聞いて秋の顔がさっきまでのものとは明らかに違うものへと変化する
今まで見たことのない厳しいものへと変わっていくそのさまはある意味恐怖を覚えた
それはなんだか俺を見ていたあの桜にも似ているような気がして...

「もうすこし早く来ると思ってたんだけど...」
「来たいとは思っても来れない事情ってもんがあんだよ」

夏がふて腐れたように言うと秋は口角だけを上げて笑った
今日は初めて見る秋の顔ばかりだ
いつもは優しい表情しかしないのに...今の秋はまるで目の前の夏に憎悪でも抱いているかのようだった

「そうなんだ...俺はアナタがあの人から逃げからだと思ってたよ」

話に入れない俺は二人の会話にそっと耳を欹てることしか出来ない
秋はいきなりクスッと笑うとそれまで眼中になかっただろう俺に視線を合わせてきた


「ツチヤ、この人はねカズオミって言って...」


さっき本人から聞いたからよと秋に伝えようと口を開いた瞬間

 

「アナタの前にここの夏をしてた人だよ」

 

秋の口から紡がれた言葉は俺の思考を止めるには充分過ぎた

 

END

アトガキ*続きます...でもその前にちょっと書き直すかも...文に繋がりがない!!

出された手に俺は素直に手を差し出した
ギュッと握られると勢いよく引き起こされる

「行こうか」

夏は俺がココで聞いていたことは何も聞かず歩いていく
ぼけ~と後姿を見送ってると夏はいきなり振り返り俺に手を振ってきた

「何してんだよ!俺はカオルがドコに居るかわっかんねえんだって!」
「あ...」

そうだった...さっき連れてってて言われたの忘れてたよ
夏は俺の方を向いて手招きしてる
なんだかすごく元気だ...夏ってみんなあんな感じなのかな?
よくよく考えると同じ時期に休暇に入るはずなのに俺って他の夏に会ったの初めてかもしれない...

「はやくしろって!」
「ひゃぁぁあ!ごみぇ~ん!」

俺は先に歩いていってた夏のところまで走った
夏は俺が横に着くとまた前を向いて歩き出す
ドコに居るか分からないって言ってたのにやっぱり迷いもしないで歩いていく夏に疑問が浮かんでくる
横を歩く少し下にある顔をじっと見ながら歩いているとその顔が急に歪んで夏は俺の方を急に振り向いた

「お前な...道案内してくれって言ってんのに俺の顔見てても仕方ないだろ?」
「あ...ゴメンね~」

にへらと笑うと夏の顔が今以上に歪んでしまった
夏の口が動いて何か呟いたように見えたけどその声は俺の耳まで届かない

「おこったぁ?」

不機嫌そうに見えたからそう聞いたら夏は俺を見上げて片眉を上げた

「そう思うんだったらちゃんと案内してくれないか?」

突然夏の口調が冷たいものに変わって驚いた俺は思わず足を止めてしまう
そんな俺の様子を見て夏の頬がヒクヒクと引きつって

「なんだよ!そのツラ!おっもしろいヤツだなぁ!」

おかしな顔をしていたのか夏はゲラゲラ笑いながら俺の方を見てくる
その口調はさっきの冷たいものじゃなくて...元の夏のものに戻っていた

「この前見せただろ?ウチの美人な冬。アイツのマネだよ」

未だにゲラゲラ笑っている夏はお腹まで抱えだしそうだ
でも...さっきのが本当にあの冬のマネだとしたら...本当にコワイ
同じ顔をしてるのにこんなに違うなんて...ここの冬もそんな感じなのかな?
やっぱり興味が湧いてくる
聞いていいのか迷ったけど俺は意を決して前を歩いている夏に声をかけた

「ココの冬もそんな感じなの?」
「なにが?」

半分だけ振り返ってくる夏の顔は角度のせいか笑顔が消えてるように見えた

「ココの冬も美人な冬さんと同じようにそんな話し方...」
「ぶ...アハハハハハ!!」

話の途中で噴出して笑い出した夏は振り返って俺の額をビシッと人差し指ではじいた

「『美人な冬さん』でもいいけど本人聞いたら殺到するぞ...俺はカズオミ。あいつはトモオミって言うんだ」
「あ...俺はツチヤ」
「...ツチヤ?」

ニッコリ笑って自己紹介をしてくれた夏に俺も自己紹介をする
そのとたん夏は俺の顔を凝視してさっきまで笑ってた顔を複雑なものへと変えていった
どうしたんだろう?
俺の顔も複雑になってしまっていたのか
夏が少し高い位置にある俺の頭を撫でた

「ツチヤって...それ元の言葉で言えば苗字だろ?」
「え?...みょうじ?」
「お前それ以外に自分の名前覚えてないのか?」
「え?え?え?俺はツチヤだよ?それ以外って...なに?」

俺の言葉を聞いて夏の顔がだんだんと暗いものへと変わっていく
その顔が双子だと言っていた冬の顔と重なって...俺の頭の中でまた何かが掠めた
会ったこともないはずなのに...でも昔どこかで見たような気がして仕方がない
ドコで...?夏に見せてもらった映像?
ううん...チガウ...
自分に問いかけても分からないと知ってるのにそんなことを考えてると肩にふわりと手が置かれた
俺がまた考え込んでいたから急かすために夏が置いたのかと思って横に視線を移す
でも夏は俺のとなりに居て同じように複雑な顔をしていた
え?じゃあ...
不思議に思って後ろを振り返るとそこには柔らかな笑みを浮かべた秋が立っていた

 

END

アトガキ*完ぺき続きます...謎文にしてるツモリでも底が浅いから先が読めそうね...テヘv

あの日出会った夏は冬に会いにきたと言っていた
この区域のことを全て知っているような足取りだった
その存在がとても気になって俺はここ2~3日どうしても落ち着くことが出来ない
あれから見かけることはないけれど近くに居ることだけは感じていたから
彼が来たってことはもう冬が近くに来てるのかな?
俺にはまったく感じることが出来ないけど、会いにきたってことはいつもならもうそろそろ帰ってきてるってことだよね
今年まだ冬が来ないのは俺がココに居坐っているから
いつもなら寒くなり始めたらすぐに暖かいところへ旅に出るのに...
今年は胸の奥がモヤモヤしていつまで経っても旅立つ気になれない
なんでだろ?どうしてだろ?
会ったこともましてや見たことさえない冬の存在が気になるなんて
今年に入ってから何度も考えてみたことだけど未だに答えは出てこない
俺は街中をプラプラ歩きながら散っていく紅葉を一枚手で受けた
その葉を落とした木に目を向けると眠そうな楓の姿が見える
辺りを見渡すと楓だけじゃなく赤や黄色の艶やかな装いを解いていく木々は眠りに誘われるのを必死で耐えているようだった
まだ冬は来ない
だから寝てはいけない
そんな雰囲気すらあって俺は手を併せてみんなに頭を下げた

「ゴメンね...もう少し待って...」

みんな俺の方を見て頭を横に振ってくれる
いい子なんだよね...みんな
俺は歩きながらこころの中でゴメンなさいを繰り返した
みんなに謝りながら歩いていると普段は足を運ばない場所へと来ていることに気付く
そこは以前春に近付かないほうがいいと言われた場所
気の歪みが激しい場所だから夏の俺には苦しいだろうと教えてくれた
そのときは春が居てくれたから大丈夫だったけど今は俺一人だけだ
ヤバイ...そう思って引き返そうとしたとき曲がり角の向こうから話し声が聞こえてきた

「だからさ...ちょ~っと会わせて話をさせてくれればいいんだよ」

どこかで聞いたことがある声
あっけらかんと話す特徴のあるその口調は最近聞いたものだった
夏だ...誰と話してるのかは分からないが少しイラついてるような感じがした

「ダメです!あの人はまだ寝てるんです」

夏と話してる声は今まで聞いた覚えが無いもので、その口調も少し怒気が含まれていた

「...ウソばっか。アイツの気配ビシビシ伝わってきてんだよ」
「そりゃそうでしょ。本当はあの人からの引継ぎだって終わっててもいい時期なんですから」

呆れたような口調で話す夏に答える相手の口調も蔑んだものに変わった

「ということは、起きてんだろ?夏がまだ居るから出てこないだけじゃないか」
「違います。とにかくあの人は今寝てるんです」
「ふ~ん...別に無理やり起こしてもいいんだけど」
「出来ると思います?」

口調だけじゃなく周りの雰囲気までも穏やかでないものに変わってしまった
壁に隠れながらずっと聞いていた俺は現場を見ようとこそっと角から顔を出した
角を曲がった先の道は行き止まりになっていてその先は空き地になっている
その空き地の前に佇んで夏は角の家を睨み上げていた
...誰かいるの?
さっきまでちゃんと声が聞こえてたんだ
でもそこには誰も居なくて...ただ若い何かの木があるだけで
木?もしかしてその木に話しかけてるのかな?
この季節にこんなにしっかり聞こえてくる木の声も珍しい
冬の樹木じゃなさそうなのにその声はまるでこれから活性しそうな勢いさえあった
相手の姿を確認しようとしゃがんだ状態でのろのろ見つからないように出て行く
夏が見上げていた場所に見えた姿はやはり木の精で...しかもあの姿は...桜じゃない?
桜なんて秋に入ってすぐに眠りに就いてしまうのに
俺の目に映ったその桜はこれから花を咲かせるのかと思うほどの生命力に溢れていた
驚いてほけ~とその光景に目を奪われてるとまた二人の声が聞こえてきて現実に戻された

「さ、とっとと出してもらおうか」
「イヤです。もしあの人が起きていてもアナタに会わせたりしない」
「フン...とうとう本性表したな」
「いやだなぁ...本性だなんて。俺はあの人に負担になることはしたくないだけですよ」
「負担にはならないだろ?俺はココの夏じゃない。アイツに会っても触っても影響は無いはずだ」
「触っても?...そんな言葉二度とあの人に対して使わないで...」

ドサッ

言い合いをしてる桜が植わってる家の中から大きな物音が聞こえてきた
その音に反応して桜が勢いよく振り返る
その振り返るときに俺の視線と桜の視線が絡まった
え?
一瞬驚いたような顔をした桜はその直後冷めたでも奥底で怒気を孕んだ目をして俺を睨みつけてくる
圧迫されるような雰囲気に包まれ息が出来ない

ガタドサッドサッ

音で我に返った桜が振りかえって慌てて家の中に入っていく
そのときに俺じゃない先ほどまで言い合いをしていた夏に向かって

「いらぬモノを...」

ボソリと呟いた声が聞こえた
圧迫されていた雰囲気から解放され俺は思いっきり息を吸い込む
深呼吸を何度か繰り返すうちにだんだんと落ち着いてきて俺は最後に大きく息を吸い込んで勢いよく吐き出した
そして姿が見えなくなった桜の木に改めて視線を戻す
今まで会ったこともない桜にあんな目でにらまれるなんて...
原因も思い当たらなくて腕を組んで俯きながら考え込んでいると影が上から落ちてきた
なんだろうと上を見上げるとそこにはニッコリ笑った夏が立っていて

「カオルの所連れてってくんない?」

俺に向かって手を差し出した

 

END

アトガキ*続きっぽい...次もきっと続く...かな?

赤や黄色に葉を染めていた木々がその彩を道に落としていく
俺はそれをぼけ~と見上げてほう...とため息をついた

「寂しいねぇ...」

ひとりごとをポツリと呟くと

「お前夏じゃないのか?」

後ろから掛けられた声に俺は振り返った
そこに居たのは俺より少し身長が低い健康的に焼けた肌を持った青年だった
この感じこの匂い...

「キミも夏ぅ?」

俺と同じ雰囲気を感じてそう言ったら青年は嬉しそうに笑った

「やっぱり」

ほっとしたように息をついた夏は俺のことをじっと見てきて首を捻る

「お前...ここの夏だろ?」
「そだよぅ~!」
「なんでいんの?」
「なんで?って居ちゃだめ?」
「ダメダメ!冬が出てこないじゃん!」

夏は頭をボリボリかきながら早かったかぁ...と呟いた

「冬が好きなの?」

普通に聞いたつもりだったのに目の前の夏は真っ赤になって俺の肩を叩いた

「ば...ま、まぁ会いにきたのは確かだけどな!!」

俺は単に季節としての『冬』が好きなの?と聞いたつもりだったのに...
この夏も冬のことが気になるんだ
いいな~...よその冬になら会えるのに...
じと~とした視線を向けると夏は目を瞬かせて俺の腕を叩く

「何しけた顔してんだよ!夏らしくない!」
「ぶ~~~だって...夏なのに冬に会えるの...」
「お前だって会えるだろ!俺ンとこの冬って美人だから会いに行けよ!」

...なんで同じ区域の冬を知ってるんだろう?
首を傾げて夏に視線を投げかけるとうん?と小首を傾げられた

「どうして知ってるの?」
「何が?」
「冬が美人って...」
「あぁ!」

納得したようにニッコリ笑った夏は歯を見せてにやりと笑った

「俺にそっくりだからな!」
「え??」
「冬って俺の双子の兄貴なんだ」
「夏と冬が...双子ぉぉぉ???」

驚いて詰め寄ると夏の手が俺の手首を掴んだ
夏は俺を見上げてきて...その手を額に当てた
その手から流れ込んできた映像に驚いて思わずわぁっと声が上がる
見えた映像は目の前の夏と同じ顔
でも持ってる雰囲気はまったく違って...真っ白い病的な肌に知的でキツく冷たいイメージを生む眼差し。
その瞳を隠すように掛けられたメガネもまた冷たいイメージを濃くしていた
夏は面白そうに俺を見ると

「美人だろ?」

ニコニコと笑みを浮かべてくる
未だに流れてくる映像に俺は見入っていた
するとメガネを掛けた冬の隣にもう一つ...影のようなものが浮かんでくる
チリっと何かが脳裏に掠めた
けどそれが何か分かる前に夏の手は離され俺は視線を戻す

「でも俺はここの冬のが好きだけどな」

また意地の悪いにやりとした笑みを浮かべた夏は俺に背を向けて歩き出す
どこに向かうつもりなんだろ...?
まっすぐ曲がり角まで歩いていくと夏はもう一度俺を振り返って手を振った
俺が慌てて手を振り返すと夏は曲がり角に消えていく
どこに行ったんだろう?
そう思いながらも俺の頭の中はさっき見た映像でいっぱいで
俺は夏の額に触れた手を見つめてそれをギュッと握りしめた

 

END

アトガキ*夏×2...登場人物(?)はまだ居たりする...

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